髄膜炎闘病記 第三回

前回までの続き。

読むのが面倒な方のために、前回までのあらすじです。

髄膜炎で入院

→地獄のような頭痛と顔面麻痺

→頭痛と眼振と耳鳴りで、何も見れない、何も聞けない

→精神世界に引きこもりだす

→もしかしたら、明日か明後日には退院できるかもしれない

→外界に幻滅。ふたたび精神世界にこもりだす

思考は進んでいきます。

僕の今年(2019年)の抱負は、「自分の煩悩と徹底的に向き合う」なんですが、
このときもどうやら向き合ってたっぽいです。
不必要な感情に気づいても、はがせない。
しかし、今の自分を構成しているのは、一見不必要な感情であって、その全てを捨て去ると、玉ねぎのように何もなくなってしまうのでは?と言っています。

と思ったら、思いっきり煩悩にまみれてますね。
団子がうまいだけでその一日が幸せに感じるくらい、何も無い日々が続いています。

そして、

退院を賭けた診察の結果…

延長線突入です。さすがにもう、絶望のどん底です。

入院直前まで、辛い辛いと思っていた音楽制作の仕事にたいして、
「実はそのおかげで生きている実感を得ていたのだ」と感謝をはじめました。

エジプトでDIOと戦うときの承太郎のようなことを言いはじめました。
※「ジョジョの奇妙な冒険」27巻参照

息がつまっています。

“what a wonderful world” です。

そして、

ついに退院していいと言われました。
しかし、まともに歩行できない状態で生きていけるのか。

迷ってます。

入院続行を決め、あらたな目標を定めました。
がんばれ、俺。

どんな状況でも、自分で選んだ道なら受け入れることができると言っています。
最悪な精神状態からは、少し抜けたと思います。

この人、空間の移動についての話をしてますが、ほぼベッドから動いてません。
いや、動いていないからこそ考えているのか。

ついに、退院するそうです。

ちょうど、スカイツリーがオープンした時期でした。
中野区の病院の屋上から、かすかに見えていました。

おっと、一度退院を決めたものの、金銭面の不安から、さらに延長するか迷っています。

迷いすぎて、別の人格が形成されたようです。

このとき、何を考えてこんなツイートをしたのかは、ハッキリいって覚えていません。このとき、30歳です。

そして、ついに、ついに…

娑婆の空気を味わいました。

2012年5月10日〜5月26日。
これにて、16日間の長い入院生活に幕を下ろしました。
そうか、今思い出すと、たった2週間ちょいしか入院していなかったのか、という感覚です。
ほとんど永遠に近い感覚でした。

まぁ、またここから長いリハビリ生活がはじまるんですが、このへんで終わりにします。


まとめ。

ツイートには書かれてなかったですが、髄膜炎という病気は、下手をすると命を落とす病気です。
入院してから最初の数日間は、悪性なのか良性なのかの診断結果がでておらず、病状は悪化するばかりで、不安しかありませんでした。
一ヶ月後、自分は生きているのか?
生きていたとして、致命的な後遺症が残っていないだろうか?と。

ただし、それほどのリスクを負ったからこそ、得るものも大きかったです。

例えば、「身体は資本だから健康は大事」という言葉。
小学生の時からずっと言われてきました。
フリーランスで働く身になって、さらに言われてきました。
もちろん、頭では、一語一句その言葉の意味を理解していましたが、身体の細胞レベルで”実感”したのは、はじめてでした。

生きているということは、どれだけ運の良いことなのだろう、とも感じました。
毎日、毎時間、毎秒、いつ病気になってもおかしくありません。
もっというと、事故にあって命を落とす可能性と毎日戦っています。
今生きているのは、相当運がいいことです。
…などという言葉は、おそらく臨死体験をしたことのない方でも、知識として知っていると思います。ただ、細胞レベルで”実感”できているかというと、僕が言うのもなんですが、絶対に無理です。
「死を意識する」など、他人の死にいくら触れても、本当に感じることはできません。リアルに自分の死と向き合って、はじめて「死を意識する」といえます。
少なくとも、僕はそうでした。

そして、何より大きかったのは、
「人生において、おそらく死ぬまでにこれ以上辛い経験はないだろう。
それを、生きたまま乗り越えた」
と思えたことです。
死ぬほど辛いと思ったときは、今でもこのときのことを思い出し、
「このときよりはマシだ」と考えるようにしてます。

と、当時の僕も言っております。

以上、髄膜炎闘病記でした。
みなさん、健康には気をつけてくださいね。


【追記】
「髄膜炎闘病記」三部作の、エピローグを書きました。

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