「伝える」のは簡単で難しい

  1. 僕は、タバコを吸いたいです。でも、タバコを吸いたくないです。
  2. 僕は、お金がほしいわけではありません。でも、お金がほしいです。
  3. 僕は、成功したいです。だから、失敗したいです。

以上、一見矛盾する3つの文章があります。
しかし、実は僕の中では全く矛盾していません。

ひとつずつ説明します。

1,僕は、タバコを吸いたいです。でも、タバコを吸いたくないです。

僕は、現在禁煙中です。ですが、タバコの依存性によって、人がタバコを吸っているのを見たり、酒を飲んだりするたびに、タバコが吸いたくなります。
つまり、タバコを吸いたいです。

しかし、僕は、息子が3歳になるまでは意地でも禁煙すると決めました。だから、タバコを吸ってしまうと、自分が決めたルールを破ってしまうことになります。
自分で決めたルールを破るのは嫌です。
つまり、タバコを吸いたくないです。

2,僕は、お金がほしいわけではありません。でも、お金がほしいです。

僕は、会社を経営しています。その目的は、別にお金儲けをしたいからではありません。
自分が描く会社のビジョン、ひいては社会のビジョンを実現したいと思っているだけです。
つまり、お金がほしいわけではありません。

しかし、そのためには、人や時間やモノが必要です。それらを手に入れて、事業を動かすために、お金が必要です。
つまり、お金がほしいです。

3,僕は、成功したいです。だから、失敗したいです。

僕は、自分がこうなりたいというビジョンを持っています。そこを目指して走っています。
つまり、成功したいです。

しかし、難しい目標を達成するためには、必ず一度目で成功するわけがないと思っています。
人は、試行錯誤の上で成長することを知っています。失敗の数だけ人は成功に近づくのです。
つまり、失敗したいです。


こう表現すると、矛盾していないことがご理解いただけると思います。
しかし、言葉は前半と後半で真逆のことを言っています。
それが同時に存在しうるということになります。
一体、どういった状態なのでしょう。

これは、前半と後半で、スケールが違うという構成になっているのではないでしょうか。
スケール、つまり「縮尺」です。
「局地的か大局的か」と言い換えたほうがわかりやすいかもしれません。

例2でいうと、
「お金がほしい」というのは、局地的観点です。
ここから、グググーッとズームアウトすると、大局的観点になり、「お金が欲しくない」になります。

つまり、どこにピントを合わせるか、主語にどこの自分を持ってくるか、今話題はどのスケール感で行われているのか。
これらが変わると、結論がまったく変わります。
実は、これがディスコミュニケーションの根源になる場合があると思います。

受け取る側の捉え方によって、「あいつ、金に興味ないからね」という評価にもなり、「あいつ、金がめちゃくちゃ欲しいらしいよ」という評価にもなります。

もっと怖い例でいうと、
「あいつは会話の中でコロコロと意見が変わる。金じゃないと言っておきながら、金がほしいと言ってる。その場しのぎでブレブレだ。芯がない。」となります。

特に、はじめての人とコミュニケーションを取る際は、視座の「スケール感」を明確にしておかないと、誤解されて伝わってしまうことがありますので、気をつけたいと思っています。


「伝える」って、思ったことを言うだけなので簡単です。でも、伝えるって難しいです。

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