スネアを貰ったような買ったような話

今日、僕のもとに、1台のスネアドラムが届きました。
スネアドラムというのは、ドラムセットの中の主人公、ドラムセットに欠かせない機材です。
送り主は、12年前までバンドを組んでいた、ドラマーの上條くんです。

このスネアは、上條くんが買って僕に送ってくれたものです。
でも、決してプレゼントしてもらったわけではありません。
にもかかわらず、僕からすると、プレゼントしてもらったようなものであるかのような、妙な感覚になっています。


僕は、最近ドラマーとしてバンドを組みました。
その話については、2019年5月7日の記事に書いてます。

上の記事を全部読むと長いと思いますので、要点だけまとめますと、以下のような状況でした。

・樋口はバンドでドラムをやったことがない
・ドラマーにとってマイスネアを持つことはほぼ必須条件にもかかわらず、現在樋口はスネアをもっていない
・ドラムショップにスネアを試奏しに行ったものの、まだ買っておらず、検討中

その後、スネアや周辺機材の購入を検討するにあたり、身近なドラマー何人かに相談しました。
元バンドメンバーであり、大学の同級生でもある上條くんは、その相談相手の一人でした。


12年前のバンド解散後、僕は福岡を離れ東京へと移り住み、
対して彼はしばらく福岡に残ったあと地元の函館に引っ越してしまっていて、頻繁に会う機会はなくなりました。
それでも年に一度くらいのペースで東京や函館で会って飲んでいましたし、ふとした何気ないことで連絡をとりあったりしていました。

そんないつものノリで、「おすすめスネア教えてー」と僕から彼に急にLINEで連絡を入れたことがきっかけで、
しばらくスネア談義で盛り上がり、会話が続きました。
そして、僕の中で「これはほしい!」という機種が一つ定まりました。
それが、上條くんがネットの中古楽器販売サイトで見つけてきてくれた、1966年に製造された、「Ludwig Acrolite」というヴィンテージの一点モノでした。
しかし、残念ながら肝心のお値段のほうが、当初想定していた金額よりも遥かに上回っていました。

僕が「あぁ…このスネア、もうちょっと金が貯まったら買いたい…金欲しい…」的なことを送ると、
彼から、ポツリと、
「それで、提案なんやけど、」と返信が続きました。
その返信の内容を要約すると、以下のとおりです。


バンド解散のタイミングでバンド資金の精算をした際、活動の中で樋口が手出しした額が多く、対して上條くんの手出し額が少なかったため、
結構な金額を上條くんから樋口に払う必要があった。
ただ、樋口は当時すでに働いていてお金に余裕があり、上條くんはまだ学生だったのでお金がなかった、という状況もあり、
「いつでもいいから返せるときに返してね」という話でまとまっていた。

上條くんは、そのお金を樋口に返せていなかったことがずっと気になっていた。

その金額と、今提案しているスネアの価格が、偶然ほぼ同じ額になる。
ちなみに、バンド解散時からずっと貯金箱に500円玉貯金を続けていて、返済額相当のお金は貯まっている。ずっと支払いのチャンスをうかがっていた。
おそらく、今がそのタイミングだと思う。
スネアという形で借りを返済したい。


…そう言ってきたのです。

僕は、そのバンド資金の返済について、そもそもそんなこと自体頭からぶっとんでおり、完璧に忘れていました。
なので状況的には、隠し忘れていたヘソクリを見つけたときのような、完全なる”棚からぼた餅”状態です。
嬉しくてたまらず、
「マジすか!すぐに買って送ってほしい!ありがとう!!!」と、
ありったけの感謝の意を込めて返しました。


しかし、ちょっと待ってください。これはよくよく冷静に考えてみると、おかしいわけです。

状況を整理すると、
もともと僕のお金を、12年間ものあいだ定期預金のような形で彼に預けていたが、今回それを引き出して、自分のスネアを買っただけ、とも言えます。
そう考えると、嬉しくもなんともないはずです。

しかし、僕の印象としては、
上條くんが返済のことをずっと覚えてくれてて、ドラム機材が心から欲しいと思ったタイミングで、僕にプレゼントしてくれるんだ!
…ってな具合で、すごく嬉しいわけです。


この話、いったいなんなんでしょうね。

キツネにつままれたような「してやられた感」がありますが、別に嫌な気分というわけではありませんし、
現に僕の手元には、昨日まで無かった、当初の予算オーバーのスネアがあり、叩くとめちゃくちゃいい音がします。

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