捨てる

ここ数年、「捨てる」ということが一つのテーマになっています。

2年ほど前。
結婚して、妻と二人で生活することになり、当時住んでいた家の近くに新居を借りました。
以前住んでいた家は、友達4人で借りていたシェアハウスだったり、職場として使っていたりしたということもあって、すぐに家を解約することができず、2ヶ月ほど、家から職場に通うような生活でした。

台所用品、家具、最低限の家電製品などは妻が使っていたものがありましたし、そんなに広くはない家だったので、必要なものを必要なときに新居に持っていくようにしていました。
そんな感じで数週間生活して、あることを実感しました。
それは、

「生きるために必要なものなど、ほとんどない」

…ということでした。
実際、僕の個人所有物で新居に持っていったものは、下着類数着と最低限の服だけでした。
それでも、何不自由なく生活できていたのです。

そして、いよいよ旧居を退居する日。とにかく、捨てに捨てました。
いるかどうかわからず迷ったものは、ガンガン捨てていきました。

捨てようと思った100個のうち、もしかしたら使うかもしれないと思って30個を捨てずにとっておいて結局10個しか使わないよりも、
とりあえず100個全てを捨てて、やっぱり必要だと思った10個をもう一度買い戻したほうが良い、と考えました。

そうしないと、その100個が「できればあったほうがいい」ものなのか、「なくては困る」ものなのかの判断ができないと思ったのです。

やったことのない方は、ぜひ一度やっていただきたいです。
やってみると、わかります。モノなんて、ほとんどなくても生きていけます。

実際、捨てたものの中には、捨てたあとに後悔し、買い直したものもあります。
でも、その経緯を辿ったことで、それは自分にとって必要なのだと、今は心から思えます。
捨てる経験をしないと、そんなことすらわかりません。

「捨てる捨てる」と言っていると、「お前はモノを大事にしないやつだ。もったいない精神がないやつだ。」と思われるかもしれません。
しかし、果たして本当にそうでしょうか。
実は僕も、昔はそう思っていました。でも、今は少し考えが変わりました。

あるとき、
「モノを大事にする」ことが、イコール「たとえ自分に必要でなくても全てのモノを捨てずに所有したままにしておく」ことではなく、
「本当に必要なモノや大切なモノを大事にするために、覚悟を持って要らないモノ──つまり死んだモノを自らの手で埋葬し、成仏させてあげる」こと。
さらにはそれが、
「無駄に命を捨てないために、そもそも最初から所有しないというマインドに自然にシフトしていく」ためのステップであると考えるようになりました。

モノに愛情を注ぐのには限界値があります。
これは人によってその総量が違うので、まずは自分のキャパシティを知るのが前提条件なのですが、とにかく所有する量は削ぎ落とせるまで削ぎ落とし、少し足りないくらいにして、できるだけ余白を空けておきたいのです。

モノがこの世に産まれ、僕のところに届くまでには、長い道のりを辿ります。
たとえばある商品は、メーカー内で企画され、それが社内で承認され、開発され、パッケージデザインされ、ユーザーテストされ、映像やチラシやポスターなどで宣伝され、小売店に営業され、卸売られ、郵送され、そしてやっと僕のもとに届きます。
何人もの本気の人間たちが必死になってそのモノを愛し、関わり、とても僅かな奇跡的な確率で僕に出会います。
そのとき、もはやモノはただの物質ではなく、人の心を背負っているとも言えます。怨念の塊です。
そんなモノを、乱雑に扱うのはなんとなく好きじゃない。だから、大切に出来ないくらいなら所有したくないと思ってしまいます。
飲食店で、食べきれない量の食事を注文して食べ残す人を見ると腹が立ちませんか?僕が言っているのは、まさにそういうことです。

最後に、もうちょっとだけ考えてみます。

モノだけではなく、時間コト、そして「在り方」についてはどうでしょうか。

生きているうちに、世の中すべてのことに興味をもち、すべてのことを経験し、すべてのことを考えて、すべてのことを完璧にこなすのは不可能です。
つまり、生きているだけで、何かを選択しているということになります。
言い換えると、「生きることは捨てること」です。
毎日毎日、知らないうちに何かを捨てていると言えます。
何が本当に必要なのかを考えることは、何を捨てるのかを考えることと同義です。

さて、明日は何を捨てるのでしょうか。

捨てる” への5件のフィードバック

  1. 素晴らしい?概念に乾杯!私は、随分、年をとりましたが。あなた様の年に、果たして、どうだたかしら?とか思います。私の子供逹は、多分、このブログに共感できるし素敵❤な概念です。
    詳しくは、この場で語れませんが。若いエネルギーを信じていますので。ヤッカンで言っているわけではなく。何ですかねえ⁉人生をこく濃密にする手段?勉強だけではなく、私も解らないのですが。丁寧な勉強は必要ですよね、?兎に角、ナニガなんでも!今を生きる❗これっきゃない❗

    1. ありがとうございます!
      若いエネルギーというほどは若くはないですが…若いつもりでがんばります!
      生きます!

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