音楽制作を生業にしていた時期を今になって思い返すと、とにかく自分をどれだけ限界まで追い込めるかの実験をしていたような気がします。
「おい樋口、お前どこまでやれるんか?あ?」
って感じです。
自分を追い込んで限界を広げる努力をしていくと、火事場の馬鹿力を意図的に引き出せるようになってきます。
たとえば、5時間で1曲作れるという自信があったとして、
あと3時間でデモを1曲作らないといけないといった状況が急に舞い込んできます。
それまでそんな短時間で曲を作った経験がなくても、もう仕方なくそういった状況になってしまってますので、死んでも仕上げないといけないわけです。
そんなときは、頭をフル回転して、とにかく作ります。
で、結局、なんとかなります。
その瞬間、それまでの限界だと思っていたところを突破して、限界が広がります。
一度限界を超える経験をすると、”サブタンク(リザーブタンク)”まで自由に使えるようになります。
エンプティーランプが点灯しているのにもかかわらず、「まだまだ行けるやろ?つーか行くっしょ!」
…と自分自身に言えるようになります。
そのとき、自分のマインドセットが更新されます。
「あ、いままで1曲作るのに5時間かかると思いよったけど、俺は3時間で1曲作れる人間なんだ」といった具合です。
マインドセットが更新されると、更新された自分のイメージに能力が引き寄せられていきます。
つまり、能力が向上します。
こういった形で、限界が広がるのはもちろん良いことだと思います。
ただ、本来どうしようもない時の最終手段として取っておくべき余力、つまりサブタンクの存在を自分で認識してしまうと、
まだまだいけるぜとギリギリまで攻めてしまい、たった一瞬見誤っただけで取り返しのつかないガス欠状態が起こり得ることもありますので、気をつけないといけません。
ちなみに、痛みや不安、ストレスが、サブタンクに手をかけるまえにガソリン補給しておけという、エンプティーランプの役割を果たしていると思います。
本来は全てに余裕を持ち、エンプティーランプを点滅させることなく仕事を終えるほうがいいんでしょうけど…、
限界突破を経験してはじめて見える世界もあるので、なかなか悩ましいところです。