少し昔の話です。
音楽を作る仕事をしていた時のこと。
毎日毎日、時間の余裕がなく、忙殺という、文字どおり忙しさに殺された時期がありました。
精神が持たなくなった僕は、長期の休みをとり、精神を回復させるために京都に旅に出ました。
そして、何一つ計画せず、朝起きて、外に出たければ出て、行きたい場所を適当にその瞬間に決めて行ってみる、という生活をした時期があります。
そして、行きたい場所が遠くても、出来るだけ歩いていくようにしていました。
もちろんですが、公共機関やタクシーを使ったほうが早いわけです。
しかし、あえて歩いて移動しました。
それはなぜか。
目的地に早く着く理由がなかったからです。
さらにいうと、歩く間に、京都の街並みを見ることができました。
ショートカットをして、効率良い移動手段をとっていたら、美しい街並みを見れてないんです。
目的地にたどり着くまでに、電車で10分とします。
対して、歩くと1時間だとします。
電車に乗った場合、その10分という時間を消費して、目的地に早く着くことができます。
それに対して、京都の街並みを見ながら歩く間の1時間は、ずっと楽しいんです。
ということは、1秒も無駄にしていません。
一体、どちらが得なんでしょうか?
言わずもがな、後者です。
目的地に到達するまでの時間は、電車移動に比べて歩くほうが6倍になってますが、無駄になった時間は歩くほうが10分少ないです。
(※厳密に言いだすとキリがないので、電車が好きで電車移動が楽しいと思う人のパターンはあえて除く)
そもそも、目的地なんてあってないようなものです。
目標があってもなくてもいい中で、「まぁ、とりあえずここに行ってみるか」と、一応、なんとなく、適当に決めた目的地です。
究極的には、着いても着かなくてもいいんです。
目的地に辿り着くこと自体が、目的ではないんです。
僕らは多分、
こうして生きているこの瞬間、この瞬間を、楽しいと思うだけでいいんです。
いま、ここ。
それしか、存在していません。