なぜ金髪なのか問題

僕は、髪を金髪にしています。
よく、「なんで金髪なんですか?」と聞かれます。

何個か答えを用意しているのですが、最もよく使う回答は、
「社会への反抗ですかねー」ってやつです。
するとだいたい、
「いつまで反抗期やってんすか笑」
という返しをいただき、いい具合で場がまとまるケースが多いです。

しかし、本当の理由はそうではありません

マジで言ってもヤバいやつだと思われるだけでしょうし、伝わったとしても別にカッコいい事でもないので、あえて本当のことをあまり言ってこなかったのですが、
どこかで一度、ハッキリと、本気で、本当のことを言っておきたかったので今言います。

「金髪が自分本来の髪の色だと思ってしまっている」からです。

金髪との出会い

はじめて金髪にしたのは2000年。18歳の時。
大学の学園祭でモヒカンにしたあと(母校・九州芸術工科大学には当時このような習わしがあった)、モヒカンの長い部分を切って丸坊主にしました。
しかし、ただの田舎の野球部みたいにだったので、スラムダンクの桜木花道のような赤に染めて、赤坊主にしようと思い立ち、
薬局でブリーチと赤の染料を買ってきました。

鮮やかな赤に染めるためには、ブリーチで色を落とし、そのあと赤の染料を入れる必要があります。
友人宅で、まずは第一段階のブリーチを髪に塗りました。
ある程度時間が経ったあと、シャンプーで洗い流し、さて赤を入れるかと鏡を見た瞬間、なんとも言いようもない感覚に見舞われました。

今まで黒髪で生きてきた自分の人生が、まるで嘘だったかのように、金髪の自分の姿が、驚くほど「しっくりきた」のです。

そして、貧乏大学生だった当時の僕にとってはなかなかの決意が必要だったのですが、せっかく買ってきた赤の染料は捨てて、金髪人生をスタートさせました。

その後、黒に戻したり、また金髪にしたり、間をとって茶髪にしたりしてみましたが、結局金髪に戻し、
2003年から2017年までの約14年間は、途切れることなくずっと金髪で過ごしてきました。

去年、自分の結婚式でサプライズのために黒髪に戻して、評判も金髪より断然よかったので(そりゃそう)、10ヶ月くらいそのままでいましたが、やっぱりどうしてもしっくりこず、鏡を見るたびに自分の姿がイヤでたまらなくなり、また金髪にして戻してしまいました。

大前提として言っておきますが、
僕は、金髪をオシャレのつもりでやっているわけではありません

「しっくりきたい」

ハッキリ言って、オシャレランキングでいうと、金髪は相当下の方です。
いや、相当下どころか、「パワフルなオバサンがよくやる紫色」と共に、ワースト1位を取り合うポジションにあると思います。
モテるかどうかだけで考えると、金髪のせいでだいぶ損をしてきたんだと思います。
(モテてないことを金髪のせいにしたいわけではない)

それでも僕は、はじめて行く美容室の美容師さんに、
「染料は入れず、ブリーチだけで脱色して、昔のヤンキーみたいな下品な金髪にしてください。」と伝えます。

カッコよくありたいわけではなく、
なんらかのメッセージ性を込めたいわけでもない。
「しっくりきたい」からです。

心と体が、なんか違う

ほとんどの日本人は、たいして苦もなく当たり前のように生まれてきたままの黒髪で生活しています。
たまに普段と違う自分を演じたくて色を変えてみますが、黒髪に戻ります。
自分がイメージする自分の姿、つまり魂の姿が黒髪なのだと思います。
もしくは、自分の体を、心から受け入れることができているか、です。

でも、僕はそうではありません。
産まれて来た姿と魂の姿が違います。
黒髪の自分でいるときは、どうも嘘をついているような気になります。

髪の色ごときで、僕ごときが感じるどうでもいい感情ごときと並べてしまって本当に申し訳ないと思いつつもあえて言わせていただくと、
トランスジェンダーの方々も、似た感覚なのではないかと推測しています。

一つ大きく違うのは、心と体で「性別がしっくりこない」という感覚は、説明するときにわかりやすいし、
同じように悩みを抱えている方が多数いて、悩みの重さが人に伝わりやすい。
語弊をおそれずに言わせていただくと、「市民権を得ている」状態です。
それに対して、どうでしょう。「髪の色がしっくりこない」という悩みの規模の小ささとわかりにくさといったらありません。
なので、「とるに足らない小さな悩み」として、問題にすらされないことも多いと思います。

加えて、日本人の金髪は、とにかく印象が悪いです。
特に、親世代からの印象は最悪でしょう。
「髪を染めるイコール不良」という感覚が、世代が上に行けば行くほど強いからです。
それを肌で感じるたびに、いつも、嫌な気持ちになります。
なんで自分が、黒髪が一番しっくりくるという東洋人として当たり前の感覚でいられないのだろうと、嫌になります。
違うだけなのに、反抗をしているとか、調子に乗っているとか、こだわりが強いなどと勘違いされて、嫌な顔をされることもあります。

ついでに言うと、黒髪なら気軽に美容室にいけるのに、
金髪なら、染髪で時間がかかるので、半日空けないと髪を切りに行けないということについても、面倒でたまりません。

損得のみで考えると、金髪は、デメリットの方が明らかに大きいです。馬鹿らしい。
だから、「しっくりこない」という少しの違和感を抑えつけさえすれば、数倍楽に生きていけます。
普通の人は、それができるくらいの器用さを持ち合わせているのだと思います。
でも中には、僕のようにそのたった少しの違和感を無視できない人間もいるという事を理解してほしいです。

「思う」自由は誰にも奪われてはいけない

そんな少しの違和感、感じるからいけないんです。
気にしなければいい。自分は金髪なんてバカらしいと思えばいい。そう考える方もいると思います。
ただ、僕は考えはそうではありません。

「思うように思う」のは難しい。
いや、コントロールするどころか、それ以前に、心が感じていることに自分で気付くことすら難しいです。
人間の思考の殆どは無意識が決めてしまっていることだと思っています。
そして気付いたところで、心が感じていることと、頭で考えて導き出した自分の理想像が違う場合、心を抑えて頭に従ってしまい、心が「思っていない」ことにしてしまいます。
でも僕は、この状態は不健康だと思います。「思うこと」は自由であるべきで、「思った上でどう行動するか」だけが制限的であるべきです。

忍耐力とは

忍耐力という言葉があります。
これは、心で思う自分の理想と、現実の自分との間に能力差があったり、
理想の自分になるために達成すべき目標がある場合においてはとても便利で、有効で、必要な力ではあると思います。

ただし、これが違うケースで働くと、悪い意味で違和感を抑えつけて動きを止め、現状維持の方向に働く場合があります。
我慢ができてしまうと、動けなくなる場合がある、ということです。
逆に、我慢ができない人は、本当の自分の居場所をもとめて移動することができます。

僕は、黒髪であることに、耐え忍ぶことができませんでした。
みなさんはどうでしょうか。
問題があった場合、
現状から動いて、あるべき姿を目指すことで解決するケース、
現状にとどまり、忍耐力で乗り切るケース、
どちらが多いでしょうか。

これは、どちらが良いとかではないんですけどね。

なぜ金髪なのか問題” への8件のフィードバック

  1. はじめまして、まるで自分を見ているような感覚になりました。
    自分自身もある時期から黒髪の自分に違和感や嫌悪感を感じるようになりそれ以来髪を金髪にするようになりました。周囲からは軽蔑され家族には何度も止められたが自分は聞く耳を持たずに家族は根負けして何も言わなくなりました。しかし自分は自分は正しいと胸を張っている訳ではなく「自分は日本人失格だ」「黒髪にできない異常者」だと己を攻め苦悩して生きていました。しかし最近はどうしようもないと感情に折り合いを付け生きております。違和感や嫌悪感を感じながら生きるよりは自分が納得の行くように生きた方が自分は楽ですね。似たような考えの方がいらっしゃって勇気が貰えました。

    1. お初にお目にかかります!こんにちは!
      僕はジェンダーレスです✨
      金髪歴10年以上のキャリアです✨
      (地毛は生まれつき黒髪でも金髪でもありません。因みに学生時代、地毛証明書を持たされた程地毛の髪色も明るいのですがどこか物足りなさを感じて金髪の今に至ります)

      早速、何故金髪か?にお答えします!
      アンサー→金髪は僕にとって何よりの
           心の安定剤だからです✨
      (あまり声を大にして言いたくはありませんがしいて言うなら鬱予防の為です)
      金髪でいる自分はポジティブになれますし、自分の力を最大限に発揮出来るのです!が、しかし周囲の理解は乏しい日本。
      だがしかし、僕は僕の為にこれからも金髪を貫くと決意した!!僕は金髪によって生かされていて金髪もまた僕の為にある✨文句があるならヴェルサイユへいらっしゃい(笑)

      PS.
      僕は金髪の人達への偏見がなくなる事を心より強く願うよ!どんな髪色も許される社会の器が欲しいところだな✨

  2. ピンバック: 黒髪 | HIGUCHI Kiyonori
  3. 初めてブログを見ましたが‥
    あまりに自分と重なりすぎる部分が多すぎて笑ってしまいました‥
    (芸大あたりが超地元ということも含めて笑)
    自分は地毛も元からギリギリ赤毛検査くらいまではいかない色で
    高校を卒業した途端にブリーチしました。
    そのときに
    「絶対にこっちのほうが自分らしい」
    と思うようになり、
    28歳になった今まで黒の時期はおそらくありません。茶髪〜金髪です、むしろ地毛が明るいことに加えブリーチをしすぎて完全な黒にはもうなりそうにないです笑

    ただ社会に出れば本当に理解されません、
    「いつまで学生気分やっているんだ」
    とか
    「染め粉のお金払うからお願いだから黒にしてくれ」
    と言われたこともあります。
    面接でいくらパリっとスーツを着ても
    能力があっても
    髪の色で落とされることもあります。

    自分が思うのは、髪の色だけで人を判断するのはちょっと考えて欲しいということですね
    金髪でも真面目な人はいますし
    黒髪でも悪いことをする人はいます。

    もっと金髪への許容が増えていってほしいです。

  4. もともとメッシュやインナーに原色や金をいれていて留学を機に全頭金にした女子大生です。海外にいることもあり特に驚かれはしないのですが日本人からはなんで金にしたのとよく聞かれます。私からすればあなたたちが茶髪に染めているのと同じ感覚なのになんで気んだとここまで聞かれなければならないのかうんざりです。就活を控え、黒染めしなきゃねーといわれるたびになぜ金髪は日本で印象が悪いのか考え続けていた中このブログに出会いました。まだ先述の問いの答えは出ていませんが何か手がかりをつかめたような気がしました、ありがとうございます。

  5. 30代半ばの主婦です。
    昨年初めてブリーチし、ずっと憧れていた緑やピンクなど様々な色をこの1年間入れてきました。
    昔から憧れがあったにもかかわらず、自身が勝手に思う周囲からの圧力を理由に諦めていました。が、やってみれば好意的に受け止めてくださる方が多く驚きました。きっと恵まれた環境であるのだとも思いますが。
    ブログを拝読しまして、ずっとモヤモヤしていたものの正体が見えた気がして目からウロコでした。

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